『役行者顛末秘蔵記』
(えんのぎょうじゃてんまつひぞうき)

<第二章までのあらすじと主要登場人物紹介>

※年齢は数え年
泰澄
(たいちょう)
17歳
主人公。名高き呪術者である葛城の行者に弟子入りしようと、故郷の越前から大和にやって来た。先祖はもともと近江の神職であり、その霊的な力を強く引いている。幼い頃に亡くした母の念持仏である聖観音(しょうかんのん)像を持っており、常に身辺に置いている。真面目で素朴な性格の少年。出家する前の俗名は「三神大長」(みかみのひろなが)。※念持仏(ねんじぶつ)…個人が毎日、身近において礼拝するために持っていた仏像。小型のことが多い。

韓国広足
(からくにのひろたり)
24歳
官吏への登用を目指して葛城の行者に弟子入りを希望し、数カ月もお山に通っていた。泰澄と出会い道中を共にするが、土蜘蛛に襲われて下山。都に戻ったところ腕利きの薬師・トトキの噂を聞いて彼女の押し掛け弟子となる。古代豪族・物部氏の流れを汲み、幼い頃は武人を目指していた。口が悪くぶっきらぼうだが、根は気のいい青年。

役小角
(えんのおづぬ)
?歳
大和の葛木山に何十年も前から住み、薬学と呪力に優れた行者として名高い。通称は「葛城の行者」。27年前に起きた壬申の乱では天武天皇に与力したとも噂され、近年はまったく姿を現さないという謎の人物。土蜘蛛に襲われた泰澄を危機一髪のところで助け、弟子入りを志願する彼を葛木山にしばらく置くことを許した。最近は葛木山よりさらに南に位置する吉野に籠っており、何かを作っている最中らしい。
トトキ
最近都にやって来た旅の薬師。腕が良く、広足の甥・真先に塗り薬を渡したことがきっかけで広足と出会うことになった。都にやって来た泰澄に水をやったり、気が強いが面倒見のいい女性。

小鬼たち
左からキスケ、キイチ、キトラ。キトラは女の子。小角に仕える前鬼・後鬼夫婦の子供の鬼達。人間嫌いで、葛木山にやって来た小角への弟子入り志願の行者達は彼らがいたずらをして追い返してきた。唯一、キスケの命を助けてくれた泰澄には心を開いている。

前鬼
(ぜんき)
小角に昔から仕える鬼。妻の後鬼(こうき)と共に小角の身辺を護っている。人間の言葉は話さないが小角とは意思が通い合っている。

一言主神
(ひとことぬしのかみ)
古来葛城山に住むと言われてきた神。悪いことも良いことも、ただ一言で言い表し実現させるという凄まじい霊力を持つ。その能力から託宣の神とも言われる。その昔、雄略天皇の時代に天皇と同じ姿で山中に現れ、その威力に天皇さえ屈したという伝説がある。

藤原不比等
(ふじわらのふひと)
41歳
太上天皇の側近にして有能な政治家。太上天皇の一人息子・草壁皇子の信頼を得たことから宮中で存在感を増し、新帝の即位に伴い娘・宮子を入内させ日の出の勢いとなっている。元は天武天皇が打倒した近江王朝の重臣の子であったため、出世の道は閉ざされていた。宮子に男子が産まれ、天皇の外戚として力を振るうという野心を秘めている。太上天皇が信頼を寄せるという葛城の行者に警戒感を抱いている。

藤原
武智麻呂
(ふじわらのむちまろ)
20歳
不比等の長男。病弱ながらも学問熱心で、故事来歴に詳しい。弟の宇合を連れてお忍びで都に出ていた際、偶然広足に出会い彼に興味を持つ。意外と負けず嫌いな性格で、房前にも競争心をあらわにすることがある。その整った顔立ちから都の女性の人気も高い。

藤原房前
(ふじわらのふささき)
19歳
不比等の次男。武智麻呂とは同母兄弟で、兄と同じく都の女性のアイドル。父の政治的手腕を受け継いでおり、頭が切れる。兄からのライバル心を感じ引け目に思っているところがある。


土蜘蛛
(つちぐも)
葛木山に古くから住むという伝説の妖怪。若い男を美女の姿で引き寄せ、喰い殺してきた。現在は小角によって西谷に封じ込められているが、迷い込んだ広足をおびき寄せ喰い殺そうとしたところを泰澄に阻止された。
太上天皇
(だいじょうてんのう)
55歳
現在の帝(第42代文武天皇)の祖母。名は鵜野讃良(うののさらら)。息子の草壁皇子が早世したため自らが即位、第41代持統(じとう)天皇となった。譲位した現在は太上天皇と呼ばれる。たびたび吉野に行幸し、葛城の行者との関係が噂されている。在位中には藤原京への遷都を行い夫・天武天皇の事業を完成させ、まだ年若い孫への譲位も実現させた、稀に見る辣腕政治家でもある。

氷高皇女
(ひだかのひめみこ)
20歳
帝の姉であり、太上天皇のただ一人の息子・草壁皇子の長女。物静かで穏やかな性格であり、都一の美貌を謳われる才色兼備の皇女。

県犬養三千代
(あがたいぬかいのみちよ)
天武天皇の時代から宮中に仕え、帝の乳母ともなった有能な女官。九州に赴任している夫との間に三人の子があるが、現在は不比等と愛人関係となっており、半ば公然の秘密となっている。

文武天皇
(もんむてんのう)
17歳
2年前にわずか15歳で即位した現在の帝。草壁皇子の血を引く唯一の男子で、名は軽(かる)。天武の年長の皇子が何人もおり、本来は軽皇子が即位できる状況ではなかったが、太上天皇と不比等の策謀と根回しによって即位可能となった。不比等の娘・宮子を妻の一人に迎えている。

藤原宮子
(ふじわらのみやこ)
文武天皇の即位と共に入内した不比等の娘。武智麻呂・房前には異母妹に当たる。入内から3年目だがいまだに子に恵まれず、父の不比等は気を揉んでいる。

以下、必要に応じて増える予定…


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